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Dialogue

第一章

役との距離感

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深田

実は撮影した素材量がかなりあったんですよね。

ずっとカメラが横移動をしているカットは脚本になくて後から加えているし、富岡さんと中川さんのシーンで言うとルイがアパートで1人になっているシーンをいくつか撮っている。芽衣子に関しては中川さんと話し合って、全部の撮影が終わった後にカメラとの距離を変えて撮ってみた。ほとんど編集の段階でカットしたんだけど、今振り返ると撮影しながら役のことを掘り下げようとしていたのかもしれない。

 

中川

私達がその役に近づくのと同じように、深田くんもルイとか芽衣子に近づくための時間だったのかもしれないね。

 

深田

芽衣子って今見返しても本当に動かない人って言うか、すっと立ったままみたいな時がすごく多くて。アクションはしないしリアクションをするのでもどこか拒絶気味っていうのはずっとある。やっぱり脚本を書いてる段階で「こういう人」って思っていることが、現場に入っていくといわゆる言葉で説明できる人物像からだんだん離れていく。映っている人がこの役っていう感覚になっていくんですよ。役と俳優の姿が近づいていく。

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富岡

ゆかりさんと私の芝居の質?みたいなものの違いは最初から感じてた。ファミレスで初めてゆかりさんと監督と三人で会った時に、ゆかりさんが役のことを“彼女”って言ってたの。一緒に芝居をしてみると、ゆかりさんはちゃんと役と自分の距離感を保ちながら芝居している感じがあった。それが私の中ではすごく新鮮で。

 

深田

富岡さんは役に近づき過ぎてしまう?

 

富岡

そう。私は近づき過ぎてしまう。でもそれって時にめちゃくちゃ独りよがりになっちゃう感じもあって。”熱演”だねっていう。今回も最初は役に寄っていこうとした感じがあった。でもゆかりさんと逢えたことでいつもとは違う役との距離感を得た気がする。いつもは撮影が始まるとバイトを休んでたんだけど、この時はわざと撮影時でもバイトを入れてた。撮影後、あえて自分に戻る時間を作って、次の日現場に行ってみんなとミーティングして、そこで役のスイッチを入れていく、みたいな。

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富岡

芝居をしている時はルイの方が芽衣子にアプローチをかけているのだけど、カットがかかると、ゆかりさんが私に寄ってきてくれて、心を開かせてくれて(笑)。その関係が芝居をしやすい距離感にしてた気がする。

 

中川

私は渡邊りょうさんとのシーンが多かったんだけど、りょうさんも英里子ちゃんに近い芝居の方向性があって。

 

富岡

やり方とか取り組み方がね。

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中川

そう。役と自分の結びつきをちゃんと握って自分の声で喋るやり方というか。俳優として当たり前のことだと思うんですけど、私は当時自分なりの方法が自分で掴めていなかったので、純粋に、共演者のみなさんすごい、と。私も今はその感覚から変化してきて挑戦もしてますけど、この映画では、そういうとこでみんなは“生きてる”のに、“生きてない”人が混ざってる感じがすごかった(笑)。

 

深田

それは現場中に感じていたの?

 

中川

感じていたけど、何が良いかは完全に深田くんに判断を委ねてました。

俳優は役=他者を受け入れつつ自分と混ぜあわせて、自分の体と声を使って現す。その前提に立つと、当時の私がやったことは、芽衣子ではなく私自身の要素の方が強いんじゃないかなと自分に感じていた。ただ、今から振り返ると6年前の自分は今とは別人と思うほど距離感があるので、現れているものが役なのか自分自身なのかはもはやわかりません(笑)。

 

第二章

リハーサル・撮影現場

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中川

渡邊りょうさんに言っていただいたことで本当に嬉しかったことが2つありました。1つ目はリハーサルで初めてりょうさんと演技した時。ちょっとした待ち時間に、りょうさんは脚本を読み込んでいて「僕が芽衣子の役だったら結構悩む」って言ってくれたシーンについて私はその時ノープランで(笑)。何も考えてない自分って本当に駄目な俳優だって瞬間的に激しく落ち込んだところを「今日僕ね、失敗しようと思って来たんですよ。」って言ってくれて。

 

富岡

優しいよね、りょうさんって。

 

中川

すごくほっとして、今起きることを試してみようと思ってリハーサルに臨めました。

もう1つは撮影期間中か終わってからかタイミングは覚えてないんですけど。芽衣子は表に感情を出さないし感じてることがあるのかあやしいくらいに無表情な役だったのに「すごい楽しそうにお芝居しますよね」って言ってくれたんですよ。なんて良いことを言ってくれるんだろう!と。ほんとに一番嬉しかったんですよね、それが。

 

深田

外側からはそう見えてて嬉しい、と。

 

中川

うん。自分にとっては演技って難しいものだし、苦手なものだし、だけどやめられないものだから。いつ俳優の看板を下ろすかっていつも考えちゃうんだけど、そうやって自分以外の人に言ってもらえたおかげで「私は楽しんでるんだ。芝居が好きなんだ」って。自分がそう感じてる事実は、確かにあるんだと思えたんですよね。

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深田

富岡さんとジントクさんはなかなか会えなくて特殊な撮影でしたね。

 

 

富岡

そうそう。

 

深田

リハーサルでは即興をやりながら一緒に関係性を探っていて、だけど現場では7日間くらいある2人の撮影で6日間は合わなかったんだよね。

 

富岡

ずっとリモートで、ミーティングも会わずにしてたんです。

 

中川

それこそ今は日常みたいになったけど。

 

富岡

リモートなんて言葉、その時ないか。PCの画面を通して朝おはようって言い合って。

 

中川

切ない(笑)。

 

富岡

しかもジントクさんは車の中にいて、周りがほとんど黒く覆われてて。現場でジントクさんと和気あいあいした印象もなくて、スタッフさんが私たちを会わせないようにしてくれてた。あの時会っちゃってたら多分本編のシーンにはなっていなかったなって。いざ本編の撮影で役として会った時、やっぱりジントクさんは身体表現をする人だから、言葉だけじゃなくて行動で芝居してくれた。私に触れてくれたんですよ。今まで体温がなかったものに、体温を与えてくれた。だから一回その体温を受け入れて、2回目拒絶するっていう芝居が成り立った。それは台本に書かれていたことじゃなかったし、すごく印象に残ってる。その後言った言葉も台本には書かれていなかったはず。

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深田

こっちは怖いじゃないですか。ずっと富岡さんはアパートにいてジントクさんは車の中いて、この瞬間を撮らなくちゃいけない。テイク2をどこかで考えちゃうんですよ、演出側からすると。ちらっと助監督の島田にテイク2のことを話すと「いやいや、これはもう何があっても1回じゃないとダメです」と。

 

富岡

敏腕島田さん。

 

深田

そりゃあそうだよねって(笑)。あとはこれ以上日が落ちちゃうと画面に全部光が入っちゃって、ちょっと素材として使えなくなるかもみたいな状況で。それぐらい全部がギリギリだったんですよ。

 

富岡

そうだった…。

 

深田

さらにジントクさんが「僕、このシーンで何が起こるか、別れられるかわかんないです」って言われたの。そう言ってくれたのはリハーサルで即興をやっていたからっていうのもあると思うんだけど、もう起こることを見つめるしかなかったんです、ぼくは。演出がどうとかそういうことじゃなくて、その場で起きたことをとにかく見るしかなくて。でも今考えるとものすごく映画の本質的なことではあって、記録されたものをとにかく見るしかないんだよっていう。ぼくが一番観客になってた。

 

中川

そうだよね(笑)。

 

深田

OK出すしかないんです。何が起こっても。

 

富岡

OKの後の深田さんの感想は「最後振り返るんだ…。富岡さん見ましたね、振り返るんですね。」って言ってた(笑)。

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