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居場所を失い、この世界から忘れられてしまう不安を抱えて、ふたりは惑星のように物語を彷徨う。しかし、その感情は安易なドラマに飲み込まれることなく、ひとつの光学装置となって世界へと折り返される。その無垢なる視線が発見するのは純粋な体験としての世界の光景=映画なのだ。      

諏訪敦彦監督

『風の電話』

奇跡的に出会っても同じ言葉を使っていてもすれ違い離れていく。何度でも何度でも、時間を使い場所を変えて繰り返す。画面から溢れ出る同録の、映ってはいないけど確実にそこにいるであろう人々の生活の音。遠くピントも合ってないところで遊ぶ子どもたち。一見無駄に見えるループだけど、そのループこそが「生きてる」ってことかもしれないし、面倒くさい事に巻き込まれてる、面倒くさい彼女たちの「希望」なのかもしれない。

井口奈己監督

『犬猫』『ニシノユキヒコの恋と冒険』

横浜に通い、ロケハンも撮影もして来た者として、本牧あたりの無機質で何処か人間の存在を小さく感じさせる「あの風景」を写し取る詩的な感性に素直に驚く。ただ、小さくとも人は確かに存在している。やがて、この映画はいつの間にか(と言うほかない)二人の女性の実存を問うものに変貌していく。風景のなかにいた人が、ハッキリと浮き出てくる。この危うく美しい瞬間、この映画は詩であるよりも散文であることを果敢に選び取る。ここに監督・深田隆之の向かう先もあるのではないか。

濱口竜介監督

『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』

記憶と記録をめぐる、ささやかな感傷。

人は覚えていることを忘れることで、心を調整するのに、

なぜに機械を使ってまで、それを残すのだろう。

演劇は残らないものであるのが美徳だと聞いたことがある。

私たちは映画を撮る。

映像を、作品を残そうとしてしまう罪深さに、しばし思いを馳せた。

七里圭監督

画面から溢れ出す無数の音に驚かされる。車の走行音、子供たちの声、凶暴な風の音。激しい音の波のなかで、女たちの足音は小さくかき消されそうになる。けれど二人はやがて宇宙の果てのような場所へたどり着く。これは、自分の音を探究する二人の女が出会うまでの物語だ。

月永理絵  ライター・編集者

観る者は、決して圧倒的ではない明るく穏やかな悲しみを発見するだろう。それはこの映画の鼓動であり、登場人物への敬意であり、悲しみの感情とは私たち人間の最後の証明であるかのようだ。

ベルフォール国際映画祭

ルイとメイコ、2人の間に芽生えたわずかな絆だけが、前進するための道を切り開くだろう。深田隆之監督は現代社会を黙想し、人間の感情が開花する(あるいはしない)空間、女性の役割などを鋭く観察し描いている。

ポートランド美術館 

ノースウェスト フィルムセンター

映画の中から風が吹いてくるのを感じます。たぶん、本牧の港から流れてきているのかなあ。そんな心地よい風を感じながら、透明人間か幽霊にでもなった気持ちで、よく知らない彼女たちの人生の1シーンを98分間愛おしく見守っていました。

吉見茉莉奈 俳優

深田 隆之は実兄です。

生まれた時から知っている関係ということもあり、不思議な気恥ずかしさと誇らしさがあります。兄と弟というのも一筋縄ではいかない距離感の関係性だと思っています。僕は映画の中で出てくるふたりの関係性を自分たちの関係性と照らし合わせながら見てしまいました。兄の日頃から出ている謙虚な姿勢のようなものが演出に現れているようで僕はこの映画がとても好きです。

​マーライオン シンガーソングライター

光の粒子がサラサラと眼に触れる喜び。

丁寧に捉えられたグレートーン、鮮やかなレンガ色や、黒に沈まない影の浅葱色が印象的で、色の諧調はしっかりと秩序を湛えて美しい。しかしある時からシャツにも空にも定着しない飛んだ白が現れる。色彩が物の形や固有名詞からだんだんと解放されてゆくシーンに、鑑賞者である自分の心も同じように開いてゆくようだった。映画を観た後、帰り道の景色が生まれ変わる名作。

中山晃子 画家・ペインター

人生の走馬灯に出てきそうな、どんな決死の局面場面も、けっして誰かひとりのものではなく、おおきな地球の回転、他の何かの時間、そういう他原理の運動の重なりのひとつにすぎない。誰かが泣いているときに、誰かがあくびをして、誰かが死に、生まれ、花が咲き、葉が落ち、蛙が泣き、鳥が飛んでいる。ピタゴラスイッチみたいに、何かの反応で隣の物事が動いているわけでもない。重心はどこかにあるようでどこにもない。それがとっても残酷で、豊かで、でもとても救われることだと思えるような、不思議な映画でした。

冨永美保 建築家・tomitoarchitecture代表

ゆっくりと動く船、のろのろと持ち上がるコンテナ、眠そうなクレーン、唸り続けるノイズ。忘れられた街の重力に引き寄せられて停滞する静かな時間。そこから海風に吹かれるように撮りたい/演じたい欲望が立ち上ってゆく。ふわふわと浮遊するふたつの魂は頼りなげだけれど、きっとしぶとい。

なぜだかそう思わされた。

岡室美奈子 早稲田大学演劇博物館 館長